Bier 行脚:Bamberg 編

Bambergドイツでビールを楽しむのなら、Bamberg(バンベルク)は必ず訪れなければなりません。
バンベルクとその周辺の村々には、ビールが人々の暮らしの一部を担っているという昔ながらの文化が比較的残っており、至る所で新鮮で美味しいビールが飲めるからです。
バンベルクは世界遺産にも登録されており、その街並は歴史ある美しさを感じさせますが、醸造所も創業数百年級のものがざらにあります。

Bamberg
Schlenkerla『Rauch Bier(ラオホビア:燻製ビール。燻した麦芽を使用)の街』とも言われているバンベルクですが、実際には、この街に現在10ある醸造所の中でラオホビールを造っているのは二箇所しかありません。Schlenkerla(シュレンケルラ)とSpezial(スペチアル)がその二つですが、どちらの醸造所でも自ら麦芽を燻しています。
「世界のどんな醸造所のラオホビールも、燻された麦芽をWeyermann(ウェイアーマン。バンベルクにある世界最大手の麦芽会社)から買っているから同じ味がするんだよ。でも、シュレンケルラとスペチアルは違う。だから、ラオホビールを飲むならバンベルクなんだ。」
Schlenkerlaバンベルクに住む友人が教えてくれました。
「そもそも昔は、ビールといえば皆ラオホだったんだよ。麦芽を乾燥させるのにどの醸造所でも薪を使っていたからね。」

そのシュレンケルラは、いつも大勢の観光客で賑わっています。こちらのラオホは黒に近い濃い色(右上写真)。日本でも瓶で飲めますが、樽から飲むラオホはとてもフレッシュです。
実はシュレンケルラでは Hell(ヘル)も造っておりこちらも美味しいのですが、あるのは瓶だけ。『うちはラオホビールの醸造所だ』という誇りがあるため、ラオホだけを樽で提供しているのです。

Spezial一方スペチアルのラオホは薄い赤茶色(右写真左側。Lager:ラガーと呼ばれている)で、すっきりとしているけれどラオホの特徴もしっかりとあり、フレッシュで本当に美味しい。ラオホビールのイメージが変わります。
メニューに載っていない U(ウー。右写真右側。ドイツ語の unfiltiert und ungespundet :漉されておらず、栓で密閉されていない、の頭文字からとられた名前)も、とても美味しいビールです。メニューに載せない理由は、シュレンケルラと同じくスペチアルもラオホビールの醸造所だという自負があるためです。

Spezial
雰囲気のある店内や中庭で飲むのもよいのですが、そこから歩いて2、30分ほどのところにあるスペチアルのケラーからバンベルクの街を眺めながら飲むのも、また格別です。

Spezial Keller
Mahrs BräuKeesmannケラーは夏の間だけ開いていて、天候にもよりますが基本的に毎年5月1日からオープンということになっています。

バンベルクのラオホ以外のビールもどれも美味しいのですが、個人的によく飲むビールを強いて挙げるとすれば、Mahrs(マース)のAU(アーウー、上左端写真。ドイツ語の Ans unfiltiert und ungespundet:漉されておらず、栓で密閉されていないもの、の頭文字からとられた名前。『Ans』はこの地方の方言で、本来は『Eines』)と GreifenklauKeesmann(キースマン)の Herrenpils(ヘアレンピルス、上写真)。これらは外しません。この二つの醸造所はすぐ近くにあるので、併せて行くこともできます。
また、スペチアルのケラーへ行く前後に Greifenklau(グライフェンクラウ。右写真)に寄って飲むのもよいでしょう。

バンベルクを訪れる際に時間があったら、ぜひ周辺の村々の醸造所へも行ってみてください。バンベルクの街中でレンタサイクルをして廻ることもできます。
Griess村々の醸造所には観光客はほとんどおらず、近隣の住民が家族連れや仲間同士で訪れていて、ビールだけでなく食事とお喋り、カードゲームなどを楽しんでいます。そんな様子を眺めると、醸造所は昔から村の社交場だったのだな、と容易に想像できるでしょう。

このような素朴で温かい雰囲気の中で、できたての美味しいビールを飲むと、慌ただしい現代の生活の中ではつい忘れがちな、楽しい語らいの時間 ── シンプルだけれど豊かな時間を過ごすありがたさを再認識できます。
それはドイツの人々が大事にしてきたものでもあると思います。しかしドイツでも生活スタイルが様変わりしつつあり、小さな醸造所が生き残って行くのは大変だと聞きました。Mönchsambacher

「昔はどこの村にも教会と醸造所があったのよ。その脇にはだいたいベンチがあって、お年寄りがお喋りを楽しんでいたものだったわ。」
バンベルクに住む別の友人が話していました。
今はもうベンチは姿を消していますが、バンベルクとその周辺の村々の醸造所は、今も昔と同じ役割を果たしています。そのような場所がいつまでも残って欲しいと、心から願っています。