『健康第一』とはよく言ったもので、慣れない土地では余計にこの言葉が身に沁みます。
ある時、夜中に腹痛で目が覚めました。外はまだ真っ暗で、痛みを感じながら思い浮かぶのは嫌なイメージばかり……
診察を受けるには、ドイツでは事前に予約をしなければなりません。しかしそんなことを言っている余裕はなく、翌朝急患扱いで総合病院で診てもらうことにしました。
到着したのは朝一だったにもかかわらず、昼近くまで待たされてまずは検査。その結果緊急性が少ないとわかったためか、さらに待たされ、時刻は間もなく18時。
さすがにおかしいと思った頃、やっと診察室へ通されました。
医師「Hausartzt(ハウスアーツト:かかりつけ医)からの書類は?」
私「かかりつけ医はいません。」
医師「なんでかかりつけ医がいないの? 血液検査からやらなきゃならないじゃない!」
私「???」
きっと夕方でお疲れだったのでしょう、こっちは病人にも関わらずぶち切れられてしまいました。かかりつけ医がいれば、そこから血液検査のデータがもらえて手間が省けるのに、と医師は言いたかったのですね。
その医師はぶち切れたまま奥に引っ込み、二度と姿を現しませんでした(苦笑)。
次に登場した穏やかな医師の診断によると、手術したほうがよいだろうとのこと。あまりにも予想外のことだったので「受けなければなりませんか?」と医師に尋ねたところ、「私は手術をお勧めはしますが、決めるのはあなたですよ。」と言われました。
ごもっとも。翌日同じ病院で、手術の手続きをすることにしました。
事務員「で、かかりつけ医は?」
私「かかりつけ医はいません。」
事務員「かかりつけ医がいないはずはないわ! か・か・り・つ・け・医は?」
私「……」
事務員「じゃあ、近日中にかかりつけ医を見つけて、書類を書いてをもらってね。」
形だけでもかかりつけ医からの一筆がないと手術に進めない、ということのようでした。
早速近所の診療所へ行き、かかりつけ医になってもらいました。
この『かかりつけ医』、ドイツでは大抵の人が持っているようです。「かかりつけ医を持たなければならない」という規則はないので、持たなくても問題はないのですが、私の経験からするとやはり持っていたほうが何かと便利だと思います。
かかりつけ医を持って初めてわかったのですが、このシステムはとてもよいと思います。
前回の記事で書いた健康保険制度とこの『かかりつけ医システム』との相乗効果で、気になることがあれば気軽にかかりつけ医の診察を受けるようになりましたし、必要があれば他の専門医を紹介してくれるのでスムーズです。事前に予約するシステムのせいだとは思いますが、かかりつけ医では長時間待たされることもありませんし、緊急の場合は直接行けばもちらん診てもらえます。
日本に住んでいた頃、私は総合病院へ行ったほうがいろいろな科があって便利な気がしていましたが、いつでも人で一杯で途方もなく待たされるので、結局ちょっと具合が悪くても極力病院へ行かないようにしていました。でも、それでは本末転倒ですよね。
日本でもいきなり総合病院へ行くのはやめて、かかりつけ医を持とうと考えています。
え!? 入院して手術だなんて、大丈夫ですか?Blinddarmentzündungぐらいなら心配ないですが・・・どうぞお大事に!
m’amourさん、ありがとうございます。
実は手術したのは一年程前のことで、今は元気に過ごしています。ご心配をお掛けして、ごめんなさい。
Blinddarmentzündung、盲腸炎のことですね。私の病気はその程度の話だったんですが……次回の記事で手術の顛末を書く予定です。乞うご期待(笑)!