痛い話:スウェーデンの医療現場を垣間見た

あれはEnighet Kendoで地稽古の最中、六段保持者を相手に面を打ち込もうとした直後でした。「ベム!」という音が体に響き、「アキレス腱やったか? いや、違うか?」と心の中で自問自答しながら崩れ落ちた私。Skåne Universitetssjukhus
すぐに一緒に稽古していた剣道クラブの仲間が防具を外してくれ、そのまま車で近くの病院 Skåne universitetssjukhus まで運んでくれました。

運悪くその日は土曜日。受付を済ませて急患のフロアへ行くと、いくつかあった個室のひとつへ通され「ベッドで横になっているように」と言われたまま待つこと3時間。
後でわかったことですが、それらの個室全てが実は診察室になっていて、日本のように医者のところへ患者が順番に呼ばれるのではなく、それぞれの診察室にいる患者のところへ医者が回って来てくれる、というシステムになっているようです。

Castやっと現れたのはその日一人しかいなかい、と言われた医師。マルメでも、いやスコーネ県でも大きな総合病院なのに、急患担当の医師が一人しかいないって??!
ですがそれからはスムーズで、私のアキレス腱が切れていることもすぐに確認してくれました。
「スポーツ選手だったら手術してアキレス腱を縫合したほうがいいけど、そうじゃなければそのまま自然にくっつくのを待つ方法でも大丈夫。また同じような運動もできるようになるけど、どっちにしますか?」 と、暗に手術しないほうを勧められている気がしながらも、自分自身もメスを入れるのが嫌なので後者に即決。Cast

間もなく今度はスキー靴のようなものを持った看護士が登場。
スキー靴の中に踵だけのソールを3枚敷き、ルーズソックスのような靴下を履かされた足をイン。 ぶっといマジックテープで留め、仕上げにミニポンプでギプスの内側に装着されているエアパックへ空気を入れて足を固定し完了。もちろん着脱可能で、毎日足を洗うこともできます。今のギプスはなんてよくできているんでしょう! 目から鱗を通り越して、浦島太郎状態。

Cast最終的には、まるでスキーをやりたいのか剣道をやりたいのかわからない人になり、、(笑)袴にギプスで街中を通って帰りました。

6〜8週間ギプスをつけた後リハビリが始まり、完治するまでは約半年かかるとのこと。
でも驚いたことに、断裂2日後に通院したときには早くも理学療法士から「ギプスをはめてさえいれば、両足を着いてどんどん歩いたほうが血行もよくなって治りが早いわよ」なんて言われました。お言葉通り歩き回っていますが、これが結構歩けちゃうんですね、思ったより快適です。
ただし、寝ている間もギプスを付けなきゃならないのがちょっと辛い。誰もスキー靴を履いたまま寝たくなんかないですよね。。

断裂から数週間経ち、先日再診へ行ってきました。
再診の日程については病院へ行ったときに予約をするのではなく、後日病院のほうで決めて手紙で患者に通知されます。
指定された日時に病院へ行くと、全く待たされることなく診察室(個室)へ通されました。そこへ前回と同様に医者と理学療法士が来室。Cast
断裂以来投薬も何もなく、ただ歩くときと寝ている間にギプスをはめているだけなのに、経過は悪くないらしい。人の体ってフシギ!

徐々にアキレス腱を伸ばしていくために、当初ギプス内に装着した踵だけのソールを1枚取り外してくれ、残りの2枚は2週間おきに自分で取るように言われました。つまり、あと1ヶ月半くらいは通院する必要がない、ってこと。この通院の少なさはアキレス腱断裂だからなのか、スウェーデン方式なのか? いずれにしても通院する煩わしさを考えたら随分と楽です。Shoes for rehabilitation

ところで診察とは別に「リハビリ中に履く靴を発注してください。履き古した靴を窓口に持って行ってね」と言われました。よくわからないまま日本から持って来た唯一のスニーカーを発注窓口に預け、待つこと10日ほど。
届きました、変わり果てたスニーカーが。ヒールが付いちゃってるよ、、だから履き古した靴、と言ってたんだ、後で捨ててもいいように。

Castスウェーデンへ来ていろんな体験をしてみたい、とは思っていましたが、『アキレス腱断裂』のオプションは、正直余計でした(苦笑)
でも、剣道クラブの仲間の温かさを改めて実感したり、バスで席を何度も譲ってもらい(時にはおばあちゃんにまで!)人々の優しさを感じたり、病院では予想していたような待ち時間もなく(初診の際は待たされましたが)全体的にシステマティックでよいことがわかったりと、 普段とは違った体験ができたことも確かといえば確か。
とはいえ早く治して元の生活に戻れるように、せいぜい歩き回ろうと思っています。

 

スウェーデンで病院へ行く場合の追記:

急患ではなく通常の通院をする場合、スウェーデンではいきなり病院へ行くのではなく、まず 各所に設けられている『vårdcentral (Health care centre) 』へ相談に行くのが普通のようです。1177.se のサイト内にある『Hitta vård』の中の『Hitta vård』→『Vad söker du efter?』に Vårdcentral と入力 +『Vilket landsting/region?』で県を選択 +『Vilken kommun?』で市を選択→『HITTA』を押すと最寄りの vårdcentral を探すことができますよ。
私がアキレス腱とは別に体調を崩して相談に行ったときは、問診の上市販薬でも治る可能性があるとの判断で「まず薬を買って1週間試してみたほうがいいわね。病院へ行くと治療費が高いし。それでもだめならまた来てくれれば病院を紹介するから」と言われ、どの薬を買ったらよいか紙に書いてくれました。
言ってみれば処方箋までくれたわけですが、お金はかかりませんでした。その後私は治ってしまったので、まだ病院を紹介してもらったことはありませんが、vårdcentral での相談や病院の紹介は無料とのことです。ちなみに薬は『apotek』と書かれたお店で買うことができます。

 

痛い話:スウェーデンの医療現場を垣間見た」への8件のフィードバック

  1. 輪の吉

    やるね~。 いや、ちがうか。。。  どうかお大事にしてくださいね。

    返信
    1. masblo 投稿作成者

      ははは、、早速のお言葉、ありがとうございます。これも経験のうちってことで、、(苦笑)

      返信
  2. かぎや

    ベムって言うから、妖怪人間のお話かと思っちゃいました^^
    いやぁ~災難だったですねぇ。
    日本の医療とはえらく違う処置のようですが・・・
    医療費のシステムってどうなってるのかなぁ?
    だいたい断裂したのに縫合しないって? 
    断裂したのに徐々にアキレス腱を伸ばすって?
    人間の身体って複雑なのね。

    カナダの方は高い税金を支払うけれど
    ある程度の年齢から医療費はタダ・・・税金で賄われるそうですね。
    海外の良いところは見習って、住み易い世の中になってもらいたいものです。

    返信
    1. masblo 投稿作成者

      アキレス腱が切れる音って噂には聞いていたんですが、ゴムが弾かれるような音だったんですよ…ほんとに。
      たしかに、切れてるアキレス腱を徐々に伸ばすって変ですよね。切れている間隔を少ーしずつ空けて、そこを新しいアキレス腱組織が埋めていくって感じかな、とイメージしていたのですが……詳細にはあんまり想像したくないですよねえ(笑)

      以前この記事の中ほどにチラッと書いたのですが、スウェーデンでは年間に支払う医療費の上限が決まっていて(たしか数千円だったと思う)、それを超えた場合、その年はそれ以降の医療費がタダになるみたいです。税金は確かに高いらしいですけどね。
      スウェーデン国民じゃなくても、1年以上の滞在許可がおりていればこの医療制度が適用されることになるんですが、私の滞在は1年未満の予定なので残念ながら適用されません、、保険入っててよかったあ。。
      病院のシステムも合理的でよかったと思いますよ。日本が見習うべきところはいろいろとありそうです。

      返信
  3. ちえ

    えーー大丈夫?!
    もう、アキレス腱断裂とか、前十字靱帯断裂とか、みんなやめようよ~(;・д・)
    お大事に!!

    返信
    1. masblo 投稿作成者

      ちえさん、ありがとうございます!
      前十字靱帯断裂。。そんな方もいましたね、、あ、その流れだったか! 二度あることは三度……ないように周りのメンバーに気をつけてもらいましょう。

      返信
  4. mariko

    年末の忙しい時期に、旭川は大雪で毎日雪はねに時間を費やしています。トホホ・・・
    久しぶりにブログを楽しみに見たら、怪我をされたんですね!お大事にして下さいね。
    医療事情については「へーっ」と思いながら読ませていただきました。
    これからも身近な生活感のある情報を、よろしくお願いします。

    返信
    1. masblo 投稿作成者

      marikoさん、ありがとうございます!
      最近のマルメはあまり雪が多くなく、クリスマスも雪なしでした。旭川は大変そうですね〜
      marikoさんが書いてくださった『身近な生活感のある』部分って面白いこと多いですよね? これからもそんな記事ばっかりになってしまうと思いますが、、こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!

      返信

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