「まだ全然 Skåne(スコーネ)を見ていないんでしょう?」と言って、知り合いのスウェーデン人がドライブに誘ってくれました。「マルメだけがスコーネなわけじゃないからね」と言いながらも、愛車は中古ママチャリ、という私を気遣って声を掛けてくれたのでした。
出掛けたのは3月のおしまい。マルメでは雪もほとんど消えた頃でしたが、車を東へ走らせるにつれて景色は冬に逆戻りするかのようでした。
スコーネとは、マルメを含むスウェーデン南端の県名です(リンクの地図でピンク色の線で囲まれている部分)。
マルメはスウェーデン第三の都市で立派な『街』ですが、実はスコーネの多くを占めるのは耕作地と森林。今回は耕作地近辺を中心にドライブしましたが、高低差の少ない広ーい平地に広ーい畑が広がっている、というのがスコーネの特徴なんだということがよくわかりました。寒くて森の多いスウェーデンでこれだけ広い耕作地があるのは、南端のスコーネだけなんだそうです。
まず最初に到着したのは、スウェーデン最南端の Smygehuk。ここからはロンドンまで991km、ベルリンまで314km、コペンハーゲンまではたったの61km、などと方角と共に示されています。ヨーロッパにいると、あらゆる国がすぐ近くにあることに気付かされハッとすることがありますが、このときもそうでした。
海近くには魚の燻製小屋(右写真)もありました。
車をさらに東へ向けて走らせると、海際にサマーハウスがたくさん並んでいました。一見普通の民家なのですが、人影はありません。6月下旬の夏至祭以降、多くの人々が集まってくるのでしょう。スウェーデンではいつも住んでいる家の他に、夏の1、2ヶ月を過ごすサマーハウスを持っている人が多いのだそうです。
そのまま東へ行くと、Ystadという街へ入ります。ここにあるのが『Ales stenar』。Kåsebergaという小さな漁村の崖の上にある、59個の巨石で船を象ったモニュメントです。
この Ales stenar には未だに解明されていない謎が多いようです。石器時代のマークが刻まれた石があるのに発掘された人骨や陶磁器は紀元300〜500年頃のものだったり、石の位置が正確に日出日没と重なったり。今のところはバイキングよりも前の時代、紀元500〜1000年頃に建てられたと考えられているようです。
ここは景色を眺めるだけでも気持ちがよく、人気スポットのようで、多くのスウェーデン人が観光に訪れていました。(右写真は漁村にあったレストランの看板。刺さっているのは右がスウェーデンの、左がスコーネの旗です。)
ここを過ぎた頃から見え始める島が Bornholm(下写真の海上にうっすら見える薄い陸地)。
明らかにスウェーデンに近い場所にあるのに、この島はデンマーク領なのだそう。
もう一カ所訪れたのは、スコーネで最も古い建造物である『Glimmingehus』。
このあたりがデンマーク領だった1499〜1506年に建てられた要塞です。ここに住んでいた領主とその家族は大層豪勢な生活をしていたらしいのですが、近年になって一時期農作物の貯蔵庫として使われていたせいなのか、今は内部を見学してもその栄華の影はありません。
解説がスウェーデン語だったためよくわからなかったので、後日スウェーデンの公式サイトを見てみました。
それによるとこの建物には、敵の侵入を防ぐためかそれとも豪奢が行き過ぎたのか、溶けた鉛や高温の油が頭上から落ちてきたり階段室が『死への落とし穴』になったりするという恐ーい罠が仕掛けられていたのだそうです、、見学中に知らなくて却ってよかったかもしれません、、
さて、今回はダイジェスト版スコーネ観光名所巡りでしたが、スコーネには一日かけて森の中をトレッキングできるコースなどもあるようです。こちらの記事でご紹介した国立公園もそのひとつ。
自宅から自転車で行ける距離にもそんなコースがあるらしいので、もう少し暖かくなったらまた違うスコーネに触れに行ってみたいと思います。